とんこつたんのブログ

理系ラボで思ったこと考えたことから趣味の話まで/ チェコでの留学体験記

科学プレゼンのコツ

国立遺伝子研究所では、「遺伝研メソッド」なる科学プレゼンのための方法論があることを皆さんご存じであろうか。



プレゼンの方法論とか、よくあるしまた同じような話だろ


とか思った人、侮るなかれ。
なんせ私もそう思っていたが、非常にためになる話ばかでした。
というのも
理系のプレゼンでやりがちなことが、実は自分の話をつまらなくしていた原因だと気づくかされたのです!

以下書くことは、2019/11/12-13に阪大で行われた広海先生(遺伝研)のセミナーに参加して勉強になったことを参考にしています。
遺伝研メソッドは本も出ておりますので、より詳細を知りたい方はこちらもどうぞ(この記事の最後)。
ここでは、本には書かれていない、セミナーでの意見も追加で書いています。
ひとまず先にまとめだけ箇条書きにするので、気になる人は詳しく読んでください。


  • 背景知識は聴衆の最底辺に合わせる

  • Key Question とPerspective Frame でストーリーを作れ

  • 結論とKey Question は合致させろ

  • Key Question は発表開始で早めに示せ

  • ラボ構造に基づいたイントロはするな

  • 演者自身の視点を入れて語れ

  • スライドごとにまとめを入れろ



ではどういうことか一個一個見ていきます。

背景知識は聴衆の最底辺に合わせる

まずスライドを作るうえで、どのような聴衆相手かをはっきりさせます。
大抵聴衆が興味を失う理由は、
「話についていけなくなった」「何を言いたいのかわからん」
となるからです。
そうなってしまう1つの理由は、基礎知識の共有が十分ではないからです。
背景知識のレベルは、最底辺に合わせます。
なお、背景知識=導入(Introduction)ではありません。
Introductionはあくまでも自分の話すトピックの導入であり、ここで聴衆に「なんかおもろそうやな、聞いたろ」と思わせなくてはいけません。
しかし背景知識はいつ喋ってもよく、聴衆が話を理解するために必要だと思えばいつ入れても構わないのです。

Key Question とPerspective Frame でストーリーを作れ

「話がわからん」「何を言いたいのかわからん」となるのは、背景知識が足りないからという理由だけではありません。 一つの大きな原因は、Key Question とPerspective Frame がはっきりしないからです。

Key Question

話の軸となる最初の疑問提起です。
必ずしも疑問文である必要はなく、「私は病気Aに物質Bが関与していると期待する」というような提起でも構いません。

Perspective Frame

どのように話を切り取るか、話の枠組みのことです。
この切り取り方によって、どのようなストーリーになるかも変わってきます。
ストーリーを組み立てるときは、まずConclusionで何を言いたいのか、を決めます。
そのあと、そこに向かうためのKey Question, どのようなストーリーでそれを伝えるか、を考えます。

次の項目でこれらについてもう少し考えます。

結論とKey Question は合致させろ

聴衆はKey Questionに対して、何かしらの答えとなる結論が最後に来ると考えてストーリーを追います。
そのため、もしこのQuestionが適当でないと、「話についていけん」となるわけです。
例えば「病気Aの原因はなにか」という質問を提起すると、聴衆はConclusionにその原因が分かったのだろうと期待します。 しかし、実際のところ発表では「Bという物質が病気Aに関与していそうです」という結論で終わる、というのは往々にしてよくあります。
そうすると聴衆はすこしがっかりしてしまうわけです。 しかし、この質問を「病気Aには物質Bが関与しているのか?」「病気Aに関与している物質はあるのだろうか?」
などとしておけば、このような齟齬は起きず、ストーリを追いやすくなるのです。

Key Question は発表開始で早めに示せ

スムーズなストーリー展開が分かりやすい発表には大切だということが、徐々に理解いただけていると思います。
ここでさらに理解を助けるコツとして、Key Question を早めに提示しましょう。
悪い例としては、だらだらとひたすらと長いイントロ。
聴衆は「何が言いたいの?」となって、集中力を失います。(つ∀-)オヤスミー
目安として、例えば10分の発表だったら1分半くらいでKey Questionを明らかにしましょう。

ラボ構造に基づいたイントロはするな

わーーーーっ私これやってるーーー!(;゚Д゚)
と、非常に反省したのがこの提言でした。
よくありがちなのは
「私の所属するhoge研究室では病気Aについて調べています。私は特に物質Bについて調べています。」
といった感じのイントロ。
どうでしょう、皆さんもやってませんか?
これをすると、聴衆は「あ~hoge研の研究ね」となってあなたに関心が行きません。
研究発表はラボではなくてあなたの研究をアピールできる機会です。
ラボの構造に基づいたプロジェクトの説明ではなく、
自分が行った実験の結果を中心に話の構成を考えましょう。

演者自身の視点を入れて語れ

先ほどの項目と関連しますが、スライド発表と論文の違うところは
ラボではなく、あなたの見解で話ができるということです。
また、イントロで自分の趣味や興味からスタートするのもよい方法です。
ラボだけではなく、スピーカー自身に興味を持ってもらう機会になります。

スライドごとにまとめを入れろ

スライド一枚ごとにまとめを入れましょう。
これによって話を追いやすくなります。
スライドタイトルをメタファーにするのもよいですが、
もしあまりメッセージ性のないタイトルを付けているなら
タイトルをまとめにしてしまうのもよい手です。

以上です。 実践できるものがあればぜひしてみてください。 さらに気になるかたは是非本を参照してみてください!

参考: